メニューを考えよう


開業の準備をしよう

メニュー作成のまえに

飲食店経営の肝となるのが「メニュー」です。メニュー作りには、調理方法や構成、料金設定、メニューブック作成など重要なポイントがいくつもあります。それらひとつひとつが集客や売上、仕入管理、厨房オペレーションなどと密接に関連してきますので、簡単なことではありません。逆に言えば、しっかりしたメニュー構成を考えることができればそれだけ成功に近づくということです。そのことを念頭にポイントを押さえたメニュー作りのヒントをご紹介していきます。

コンセプトを明確に

お店づくりで大事なのはコンセプトであると何度もお伝えしてきましたが、それはメニュー作りに関しても同様です。どのようなお客さまにどのような目的で来店してもらうのか、それによって同じ居酒屋でもメニュー構成は全く違ったものになるはずです。メニュー作りの基本方針とも言えるコンセプトを明確にすることで、お店の雰囲気ともマッチさせ居心地の良い空間を生むことができます。季節ごとのおすすめメニューや今後メニューを入れ替えるときもこのコンセプトから外れないように検討しましょう。

メニューを絞り込む

お客さまの満足度を考えて、いろんな料理があった方がいいだろうとメニュー数を増やす方がいますが、それはNGです。お店のコンセプトがぼやけてしまい、結果何がウリなのかわからない求心力のないお店になってしまうからです。比内地鶏を使った焼き鳥専門店でお客さまのニーズがあるからといって魚料理や麺類などを充実させると、本来の目玉である焼き鳥の店舗イメージがぼやけてしまいます。また、メニューが多いということはそれだけ原材料の仕入れも多くなり、廃棄ロスを出してしまう可能性も高くなります。さらに、調理方法の数も増えるため、厨房スタッフの動きも煩雑になりキッチンがまわらなくなってしまうことも考えられます。

メニューをひとつ増やすといろんなところに波及するのでそれらの課題をクリアできるのかきちんと検討することが重要です。一般的には、個人が経営する飲食店で扱うフードメニュー数は30~50品がよいと言われています。前菜、メイン、サイドメニューなどカテゴリーを分けて考え、バランスよく決めていくと良いでしょう。

また、食材の仕入品目にも注意しましょう。食材の仕入品目数が多いと、やはり食材ロスが多くなってしまいます。メニューを増やす際は、仕入れたものの調理方法を変えたり、組み合わせを変えることで新しいメニューができないかを、まず考えた方が良いでしょう。

ここにしかないオリジナルメニューをつくる

集客ツールとしての一押しメニューを用意しましょう。「今日はあそこのお店のアレを食べたいからあのお店に行こう」「あのお店のアレがすごくおいしいから一度食べてみて」と言われるようなオリジナルメニューがあると来店動機のひとつになります。オリジナルメニューはお店を代表する商品となりますので、お店のコンセプトを反映したわかりやすいものがベターです。また、あくまで集客のための看板メニューですのであまり原価率にこだわる必要はありません。原価率に捉われて中途半端な商品になってしまっては結局凡庸な商品となり、お客さまに注目されなくなってしまうからです。原価率の調整はメニュー全体で考えればよいので、ここでは思い切った商品開発をしましょう。

原価率の低いメニューをつくる

集客を目的としたメニュに対して、原価率の低い(利益率の高い)メニューをバックエンド商品と言います。集客メニューでお客さまを呼び込み、バックエンド商品で利益をあげるといった儲かる仕組みをつくりあげるのです。よく例にあげられるのがマクドナルドのフライドポテトです。あの商品は原価率8%程度で、メインのハンバーガーを注文するお客さまの多くが注文します。このようにバックエンド商品は、①調理に手間がかからない、②仕入原価が低い、③注文しやすい、のようなポイントを押さえた開発が肝となってきます。

わかりやすいメニューブックをつくる

来店するお客さまはほぼ全員メニューブックを見ます。メニューブックを見てメニューがどれくらいあり、いくらで提供されているのかを確認し、オーダーを決めます。メニューブックにはそのような基本的な情報の伝達はもちろんのこと、お店の雰囲気づくりの役割も担っています。

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メニューブックの材質、見せ方、ボリュームなどでお客さまの感じ方はさまざまです。レザーでカバーリングされた大きめのメニューブックと和紙をつかった手書き風フォントのメニューブックでは随分雰囲気が変わりますね。メニューブックもお店の印象を位置づける重要なファクターとなりますので、お店のコンセプトからずれないように気をつけましょう。

● わかりやすネーミング

パッと見てよくわからない名前だと注文しづらいです。フランス料理やイタリア料理などの外国の料理名を付けたメニューに多いですが、一般的になじみの薄い料理名には簡単な解説文やサブタイトルをつけてあげると知らない人でも料理をイメージしやすくオーダーにつながります。

・ラタトゥイユ → 夏野菜の煮込み

・タリアテッレ → パスタの一種

・ガスパチョ  → 野菜の冷製スープ

● 料理の魅力をより伝えるネーミング

お客さまに「おいしそう」「食べてみたい」と思わせるために料理の特徴や魅力を伝えるワードを入れてみましょう。その料理のウリはどこか、伝えたい魅力は何かを考えて、より端的に表すワードを使うと効果的です。

(調理方法)

チャーシュー → 炭火でじっくり焼いたチャーシュー

(新鮮さ)

生野菜サラダ → 朝採れ野菜のしゃきしゃきサラダ

(産地)

中トロのさしみ → 大間直送とろける本マグロの中トロ

● 写真はプロに依頼

メニューで使われる料理写真はひと目でその料理がどんなものかわかります。オーダーしてもらいたい一押しメニューや文字だけでは魅力が伝えられないメニューには写真を載せたいところです。最近では一眼レフを持っていなくてもスマホのカメラ機能が良くなっていますので、自分で撮影してメニューブックに載せる方もいらっしゃいます。しかし、写真だけで「おいしそう」を伝えるにはそれなりの技術が必要です。どんなにカメラの機能が良くても撮影技術が追い付いていないとおいしそうな料理の写真は撮れません。ここは多少の経費がかかってもプロの方に依頼しましょう。出来栄えを見れば素人とプロの差は歴然です。