削るべき経費と削ってはいけない経費


飲食店の儲けの仕組みを知ろう

経費と投資の違い

利益をあげるためには、売上を伸ばすか経費を削減するかしかありません。特に経費については、1円でもムダなものが生じないように細部まで目を光らせておくべきです。どれだけ売上が低くても、経費がそれを下回っていれば一応は事業は成功と言えます。ここでひとつ注意です。いまあなたが削減するべきだと考えたものは本当に「ムダ」な経費なのでしょうか。それをカットすることで、将来お店に不利益をもたらしませんか。経費削減が直接ではなくても何らかのかたちでお店にとってマイナスになってしまうのであれば、それは必要な経費、つまり「投資」です。このように同じ経費でも無駄になっている経費と投資的意味合いを持った経費を見極めてコストカットをしなければならないのです。

例えば人件費。スタッフの給料やアルバイトの時給は人材の優劣に直結します。能力のある人材を雇用するためにはそれなりの費用がかかります。もちろん、トレーニングや教育で人材を育てることも大事ですが、ひとりでお店の経営から人材育成まで担うのは並大抵なことではありません。お客さまに質の良いサービスを提供するためにも優秀な人材を雇うことは必要です。

原材料費も同様です。交渉や仕入れルートの開拓などで仕入れ値を下げる努力はしなければなりません。しかし、安易に食材の質を落として原材料費の削減を図るといった方法をとれば、お客さまに見切りをつけられてしまう危険性があるのです。大間のマグロを使った料理を目玉にした海鮮料理屋が経営に行き詰まり、マグロの質を落として原価率を下げようとしましたが、目玉がなくなり求心力を失ったそのお店はあっという間につぶれてしまいました。安易な経費削減によって目先の利益をとってしまうようなことは避けましょう。

広告宣伝費はどうでしょうか。飲食店ではありませんが、自動車ディーラーは営業が終わった後も自動車をライトアップさせてディスプレイしています。これは電気代のムダではなく道路を行き交う車に対してアピールしているのです。それを見た人はそこにディーラーがあることを認識し、将来のお客さまになるかもしれません。わずかな電気代で道路を通行する何百台もの車に広告することができるので、集客のための投資的意味合いの強い経費です。特にオープンしたばかりのお店では、一定の期間は広告でお客さまの固定化を図る必要があります。さらに、ある程度固定客がついてもすべてのお客さまが永久に通い続けてくれるわけではありません。離れていくお客さまと同数の新規のお客さまを獲得していかなければ売上は下がっていく一方ですので、やはり一定の広告は必要で、投資的経費と言えるでしょう。

節約で意識改革

一般的に水道光熱費の売上高に占める割合は5~7%と言われています。その中でも圧倒的に多いのが電気代です。空調機器などのメンテナンスや冷蔵庫の使い方、照明の管理などできることはたくさんあります。

  • 冷蔵庫に物を詰め過ぎず整理整頓する。
  • エアコンや電子レンジなどの機器を節電タイプにする。
  • 厨房などのバックヤードの照明や空調を必要最低限に抑える。
  • エアコン、換気扇のフィルターを定期的に清掃する。
  • 照明を消費電力の少ないLED照明に替える。
  • 空調負荷を低減するためにブラインドなどの設置を検討する。

このように地道な取り組みを積み重ねていくことで、ムダな経費を確実に減らすことができます。

また、毎月の水道代やガス代、電気代を記録し、スタッフ全員の見えるところに掲示して、エネルギー費用の見える化をすることで、水道光熱費の増減がわかり節約意識を共有することができます。実はこの意識を共有することがとても重要で、コストカット自体は大幅な利益確保をもたらすものではありません。営業時間外に電気や空調をつけっぱなしにしてだらだらと過ごしているようなお店は、スタッフの経費に対する意識が薄く、売上も伸びないことが多いです。こういった緊張感のない勤務態度を改め、コスト意識を高く保つためにもスタッフにも徹底した節約習慣をつけさせるべきです。