生き残るための差別化戦略


お店のコンセプトを決めよう

ポジショニングマップをつくろう

ターゲット層、業種・業態を決めたら、ターゲット層に自分のお店をアピールするため、他店に対する競争優位性のあるポジションを築くことを考えなければいけません。競合となる相手を調査し、差別化を図るということです。その方法として、「ポジショニングマップ」を作成することはとても有効な手段です。

まず、ターゲット層は学生なのかある程度収入のあるサラリーマンか、お店の雰囲気重視なのか価格重視なのか、などを他店と比べてひとつひとつ確認していきましょう。例えば、同じ商圏にA店とB店という居酒屋があるとします。A店は比較的高級な食材を使った落ち着けるお店、B店はボリューム満点で低価格をウリにしているお店です。それに対して、自分のお店をどういうポジションに置くかを考えるのです。この時、同じポジションに競合店がいないところを狙ってポジショニングするのが有効ですが、そこが単に小さな市場のため競合店がいないだけという場合もありますので見極めが大事です。

ポジショニングマップは下図のように縦軸と横軸にパラメータを設定し、4つのセグメントに分けて、競合店と自分のお店を位置付けてみます。こうすることで、自分のお店が置かれている状況がひと目で分かるようになります。これも課題の見える化のひとつです。

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市場の細分化

事業を成功させ、それを継続していくのに最も適している状態は、市場の寡占ができている状態です。つまり、あるカテゴリーでNo.1になることです。成功を収めたいならこのことを強く意識しなければいけません。独占に近い寡占状態にもっていければ、価格競争とならず利益率の高い価格を設定することができ、それを維持することができます。これは事業をやっていく上で最大のメリットと言えるでしょう。飲食業ではありませんが、電力市場を考えてみてください。今でこそ市場参入規制が緩和され自由化が進んでいますが、それまでは独占企業による高値が維持されている状態でした。飲食業ではこのような高値を維持することは難しいですが、一定のカテゴリーでNo.1であり続けることは不可能ではありません。

それでは市場でNo.1となるためにはどうすればいいのでしょうか。最高の接客サービスか、どこにも負けない料理か、すばらしいコストパフォーマンスか。どれもお店をよくするのに必要なことです。しかし、最も大事なのはNo.1になれる市場を開拓することです。別の項で「大手企業の寡占の緩い市場」が成功できる市場だとお伝えしました。そういった市場をどんどん細分化していき、No.1になれる市場を見つけるのです。出店するエリアを絞ったり、商品や利用動機で絞り込みをして他にはない市場を考えましょう。健康的にカラダを作り上げたい人用のダイナーとしてNo.1を目指したり、いろんな国のビールを取りそろえたバーでNo.1を目指してもいいでしょう。

ひとつ注意しなければいけないのは、競合相手が全くいない市場イコール成功する市場ではないということです。なぜならそもそも需要がない市場かもしれないからです。全くゼロから需要を生み、市場を作り出すことは不可能ではないでしょうが、個人事業主レベルでは現実的ではありません。競合相手がいても、ある程度は需要が見えている市場の方がリスクは少ないです。その際、競合相手の力量を見極めることも大事です。資金力のある強い競合に挑んでも、No.1になるどころか無残な結果になるだけです。無駄な戦いは避けましょう。

普通じゃないことをやろう

他店と差別化を図るにはふつうのことをやっていてはダメです。人がやっていることと同じことをやるのは安心できます。しかもそれがある程度成功しているやり方であればなおさらです。しかし、それでは特徴のない同じようなお店ができるだけで、何のおもしろみもありません。そんなお店にお客さまが通い続けてくれるでしょうか。きっと生き残ることはできないでしょう。ちなみに総務省によると、飲食業だけではありませんが10年後に会社が残っている確率は約6%だそうです。つまり94%もの会社が10年以内に潰れているのです。その他大勢ではない、ふつうじゃない会社だけが生き残ることができるのです。これは飲食業にも当てはまります。

他の人と違うことをやるのは勇気がいります。周りからは「おかしい」「やめとけ」という声があがり、成功の保証もないのですから。だからこそ、人より深く広く考え、多くの現場を調査し、何度も何度もシミュレーションを繰り返すのです。例えば、にんにくの効いた大盛りこってりラーメンといういかにも男性客をターゲットにしそうな商品をウリにしたお店をおしゃれなインテリアとイケメン店員で若い女性グループ向けにしてみるというのはどうでしょうか。あえて逆をいくという視点で探していけば、他にもおもしろいビジネスプランはまだまだ埋もれているはずです。