客席がカウンター席のみでご主人がひとりで切り盛りしているようなお店でない限り、飲食店を始めるにはスタッフが必要です。スタッフの雇用についても、社員なのかアルバイトなのか、どのくらい雇えばいいのか、開店までの応募スケジュールに人材育成など考えなければいけないことは山ほどあります。開店直前になってあわてないように採用計画を立てて滞りなく進めましょう。また、お店のスタッフは直接お客さまに接したり、料理をつくったりしますので、お店の質を左右するものです。お店を成功させるためには優秀な人材の獲得が不可欠です。ここではスタッフの雇用と育成について解説いたします。
人件費は経費の中でも大きな項目のひとつです。スタッフをいつ何人雇用しなければいけないのか、業務内容と照らし合わせて適切な人員配置を算出しましょう。まず、厨房スタッフですが、厨房内を仕切る人材として社員を1名以上置いておきたいです。食材の仕入れから在庫管理、調理に関すること、キッチンアルバイトの指導、メニュー開発など責任を持ってお店のマネジメントに関わる人材が必要です。ここにあなたの右腕となる信頼できる人材を置くことで、営業活動に専念することができます。経験のある人材を雇用することができればベストですが、試用期間を設けてその間にじっくりとお店の経営方針やビジョンを共有していってもいいでしょう。あとはお店の規模や時間帯に応じてアルバイトスタッフを入れるかどうか検討していきます。
次にホールスタッフですが、ここにもお店全体をみて管理できる人材が必要です。あなたがその役割を担うのであれば社員は必要ありません。アルバイトは開店準備や閉店後の締めの作業も含めてシフトを組みます。平日、休日、休前日やランチ、夜で必要な人数が変わってきますので、ムダな人件費が発生しないよう適切な配置を考えましょう。ただし、混雑時にお客さまの対応ができずにクレームが出てしまうようではダメです。一般的な目安としては、10~15席に1名のスタッフを配置します。ホールスタッフだからといってホール業務だけに固定するのではなく、臨機応変に調理スタッフにまわってもらったりして遊んでいる時間がでないようにすることが大事です。
スタッフの採用は開業に照準を合わせて余裕をもって行いましょう。開業のおよそ1か月前から募集を始めて、2週間前から研修やオープンに向けての訓練を行えることが望ましいです。人材募集にはいろいろな媒体がありますのでそれぞれの特徴を踏まえて使い分けると効率的です。一昔前は人材募集と言えば求人情報誌やタウン誌を使うのが主流でしたが、最近ではWEB媒体の求人サイトがすごい勢いで普及しています。応募する側もスマホなどで条件に合う求人を手軽に探すことができるので、利用者は増えています。また、求人情報誌では2週間で10万円程度の掲載料がかかるのが一般的ですが、WEBでは無料で掲載できるサービスもあります。少しでも開店費用を抑えるためにそうした無料のサービスを利用してみるのもいいでしょう。
お店で働いてもらうスタッフはお店が成功するかどうかを左右するとても重要なファクターです。接客マナーやスタッフとしてのスキルはトレーニングで身に付くものですが、人柄は簡単には変えられません。気持ちのこもった接客やお客さまの立場を考えたサービスは人を思いやる気持ちが備わっていないと自然とできないものです。採用の際は面談などでしっかり話を聞き、自分のお店で働いてもらうのにふさわしい人材かどうかを見極めてください。社員はもちろんのこと、アルバイトだからといってシフト条件が合うというだけで簡単に採用してしまうのは危険です。面談では次のことに注意して臨むとよいでしょう。
・お店のコンセプトに共感できているか
一緒に働いていく上で同じ方向を向いているのかどうかはとても大事です。自分のお店にかける思いやコンセプトを理解し、共感できていなければ良いお店をつくりあげていくことはできません。
・協調性があるか
お店は多くのスタッフで成り立っています。いくら経験やスキルが豊富でも他のスタッフと協力して働くことができなければ良いお店はできません。そればかりか店内の雰囲気を壊してしまう可能性すらあります。能力が優秀でもコミュニケーションがとれない人はやめておいた方がいいでしょう。
・清潔感があるか
飲食業に従事するのに清潔感があることは必須条件です。不潔なスタッフがいるお店にお客さまは絶対に来てくれません。身だしなみや髪型、爪などをチェックしてNGならやめておきましょう。飲食店の採用面談に来ているのに清潔にできていない人は、そもそも意識が低いので向いていません。
・勤務可能時間帯の確認
主にアルバイト採用の時の確認事項です。採用予定の人で営業日すべてをまわせるのか確認しておかなければいけません。深夜営業であれば電車通勤でなくても通えるのか、学生であれば帰郷やテスト期間の予定なども考慮してシフトを組む必要があります。
「人は宝なり」と言いますが、どれだけ優秀な人材を育てられるかが経営者の力量です。お店の基本方針やコンセプト、服装などのマナーなどを記したマニュアルを作成しておきましょう。座学で精神を学び、OJTによってお店での動き方を身に付けさせます。最初は手間がかかっても小さなことから手取り足取り教えてあげましょう。どうしてそうしなければいけないのか理由も含めて教育することで基本動作が身に付き、応用することができる人材になります。さらに、そうした人材が次の人に教育することができるようになります。人の成長がお店の成長になりますので、時間と手間をかけて育ててあげましょう。
また、飲食店の場合、従業員同士が常にコミュニケーションを取りあうことになるため従業員間でのコミュニケ―ションが非常に重要です。例えば従業員同士の交換ノートや、ありがとうカードなど、従業員同士が、楽しく、お互いの士気を高めあっていける環境づくりも重要です。
最後に、飲食店では多くの場合、お客様に最も近いのがアルバイトであることも多いです。正社員でなくても楽しく笑顔で働ける組織を目指してください。