組織作りをしよう


組織の強靭化

マネジメントポストをつくるには

初めての飲食店開業に成功し、2号店、3号店と多店舗化していくなかで自分の役割も変わっていきます。最初は店長として現場の管理を行いますが、3店舗目ともなると全体のマネジメントの方に専念しないと経営は難しくなってきます。そこで必要になるのが組織作りです。各店の店長をまとめるエリアマネージャーや統括部長というポストを置いて経営基盤をより盤石なものにしなければならないからです。

ただし、気を付けなければいけないのはポスト先行で組織作りを行うと失敗する可能性が高いということです。マネージャーとしての能力がないのにただ売上のいい店舗の店長を引き上げてそのポストに就かせてもうまくいかないことの方が多いです。確かに現場での能力は秀でており、売上の落ち込んだ店舗の再生実績もあるかもしれません。しかし、店長としての現場管理とエリアマネージャーとしての経営管理はまた別の能力であると考えなければなりません。

マネジメントは今後この会社をどうしていきたいのか、そのために何をするべきなのかを理解していないとできない仕事です。事業主であるあなたがしっかり説明し意識や展望を共有していく必要があります。あせって組織を作るのではなく、まず組織を引っ張っていける人材を育成してからポストを作っていくやり方がいいでしょう。そしてそういう能力のある人材が上に立つことで、周りからも認めてもらいやすく、組織として統率しやすくなります。

人材確保は自ら動く

少子高齢化の波は労働市場にももちろんあらわれています。若い世代の人口が減少しているため、開業当初に優秀なスタッフを求人誌などで募ってもなかなか集まりません。店長クラスの高いスキルを持った人材は独自のコネクションを持っており、立ち上げたばかりの個人事業主の飲食店に応募したりしないからです。そうなると方法はただひとつ、自分で探してスカウトするしかありません。前の職場の信頼できる人や食べ歩きなどで知り合った店長を自分で積極的に動いて採用していくのです。

そんなに簡単にスカウトなんてできるのかと思うかもしれませんが、たかだか数名のスタッフさえ集められないようではこの先成功していくのは難しいでしょう。組織作りにおいて最も重要なのは人を説得する力です。人を説得し、自分の側に引き入れる能力は営業や交渉事に最も必要な能力であり、経営者には必須のスキルであると言えます。

ところで、優秀な人材とは学歴や資格でもなく、能力の高い者でもありません。実直でよく働く者が飲食店にとっては優秀な人材となります。飲食店のスタッフとしての作業は難しいものではなく、単純な作業の繰り返しです。少しの能力の差などは日々の働きによりすぐに埋まってしまい、そこから先の成長はいかにモチベーション高く働けるかであり、実直な人ほどそのモチベーションを高く保ち続けることができます。ですから、人材確保の際はその人の性格や人柄を十分に見極めてから行うべきです。

トップダウン経営に徹する

経営者の思想や意見、指示を現場に一方的に行きわたらせる経営スタイルがトップダウンです。逆に現場の意見を吸い上げ、採用していくのがボトムアップと呼ばれます。世間一般にはトップダウンは印象がよくありませんが、個人事業主の規模では強いリーダーシップを発揮したトップダウン経営の方が成長は早いです。現場での細かい接客方法などの改善は積極的に現場の意見を聞くべきですが、経営そのものについては自分で判断し方向性を決めていかなければなりません。経営スキルというのは現場での能力とは別物なので現場で優秀だからといって経営に参加してもらうのはリスキーな行為です。

ワンマン社長はひとりで何でも決めているイメージがあると思いますが、実際にはいろんな人の意見を聞いて判断を下しています。それは現場の意見を聞いているという意味ではなく、各分野の能力のある人間や経営の先輩の意見を聞くということです。そこにお金が必要であれば積極的に投資し、意見交換するべきです。そういった活動が経営者としてのスキルを高め、組織の成長を促します。

スタッフ満足度を高める

人には他人に認められたいという承認欲求があります。優秀なスタッフには給料を上げることも大事ですが、それ以上に働きに対する正当な評価をすることの方がもっと大事です。表彰制度をつくり、優秀なスタッフは他の多くのスタッフの前で表彰するという取り組みを行っていきましょう。表彰されたスタッフの精神的な満足度を高めるとともに、他のスタッフの自分もがんばろうというモチベーションにもなります。今の時代、能力はあるのに大きな責任を負うのが嫌であえて昇任しないことを選ぶ人もいます。優秀な人材を引き上げていくために、報酬体系や表彰制度をうまく活用してモチベーションを上げていきましょう。