お店が儲かっているのかどうかは何を基準に考えるのでしょうか。それを判断する指標が「損益分岐点」です。簡単に言うと売上と経費が同一になる点です。毎月の経費が100万円かかっているお店であれば売上高が100万円以上ないと赤字になってしまいますね、これが損益分岐点です。お店の健全な経営をしていくためには、この損益分岐点を把握し、毎月いくら売上げれば黒字になるのかわかっておくことが重要です。毎月の売上目標を明確にしたうえで、店舗経営に関わるいろんな数字を管理していきます。月の売上目標がわかると、目の前の1日の売上目標もわかりますので、それを達成するために1日1日をがんばるモチベーションになります。毎日の売上目標達成の積み重ねが成功への一歩です。
まずは店舗経営にかかる経費を固定費と変動費に分けます。経費については別の項でもお伝えしていますが、売上に関わらず一定額かかる経費が固定費、売上の増減によって変わってくる経費が変動費です。大きく分けて固定費は人件費、家賃、水道光熱費などで、変動費は原材料費などです。ここで、あれ?と思った方もいるかもしれません。そうですね、人件費や水道光熱費は会計概念上では変動費です。しかし、日々の売上によってスタッフの配置計画を細かく変えることは現実的ではないですし、売上がない日も冷暖房は入っており、照明も変わらず点いています。ですから売上収支を考えるときには現実に即した分類で計算しましょう。
固定費:人件費、家賃、水道光熱費
変動費:原材料費
計算式からわかるとおり、経費の中でも固定費を削減し、変動費の割合を高めることで損益分岐点を低くすることができ、黒字経営につながります。また、計算式は次のように簡素化できます。
まず、(1-変動費/売上高)の部分の分母をそろえます。次に、分数の割り算を掛け算に変換します。そして、変動費を原材料費に置き換えます。ここで、売上高から原材料費を引いた数字は粗利ですので、置き換えます。売上高に対する粗利の割合は粗利率になるので、損益分岐点は固定費/粗利率で表すことができます。厳密には人件費に含まれるアルバイト代などを固定費として見ていますので、正しい数字ではありませんが、ざっくり計算するにはこれで十分でしょう。
お店の経費はほとんどが固定的なものであり、運営していく上で管理できるのは原材料費と人件費の二つです。固定費となる家賃はお店を構えた時点で決まってしまいますし、水道光熱費も削減できる額はさほど多くありません。となると、固定費の中で大きくカットできるのは人件費です。しかし、そこでアルバイトを減らしたり時給を下げたり、むやみやたらに人件費を削るのは得策ではありません。スタッフのモチベーション低下につながりますし、明らかな人員不足はオペレーションに支障が出てお客さまに迷惑がかかってしまいます。人件費が管理できていないのは、シフトの組み方が良くないか、売上予測が正確でないことに起因します。日々のデータから売上予測の精度を高めること、スタッフの能力を正確に把握し、シフトを組み直すことを検討してみてください。また、お店がヒマになり余剰人員が出ているときは、スタッフを早く上がらせてしまうのではなく、チラシ配りや声掛けなどの売上を上げる努力をしましょう。コストカットも大事ですが、お店のスタッフが一丸となって売上を上げていく風土を作り上げていく方が長い目で見るとはるかに効果的です。
次に、原材料費ですが、これもむやみに削減すると逆効果です。原材料費を必要以上に削って商品のクオリティを落とすと結果的にお客さまが離れていき、売上低下につながります。飲食業の原価率の目安は約30%と言われています。販売価格に見合っていない食材を使っていたり、廃棄ロスが多いと原価率は上がってしまいます。メニューの見直しと適切な在庫管理が必要です。過剰在庫をなくし、適切な発注をすることでムダをなくしましょう。