飲食店と一口に言っても「レストラン」「蕎麦屋」「カフェ」「カレー屋」など提供するものによって様々なジャンルに分かれています。何でもいいから飲食店をやりたいという人はいないでしょうから、ある程度「何屋さん」がやりたいということは決まっているでしょう。ここは問題ないと思いますので、次のステップに進みましょう。
業種が決まれば次に業態を決めなければいけません。業態とは、商品の提供方法や利用用途などによる分類です。「お手頃価格のファミリーレストラン」と「高級食材を使った1日5組限定のフレンチレストラン」ではこの後の店舗設計が全く違います。この選択は飲食店開業にあたってとても重要なことですが、意外と考えることをおろそかにしてしまってはっきりしないまま開業している人が多いです。
そして業態を決める過程で理解しておかなければいけないのは「商圏」という概念です。商圏とは、エリアマーケティングでよく使われる言葉ですが、その店舗に集客できる地理的な範囲のことです。お客様が遠くから来てくれるようなお店は商圏が広いと言います。反対に、近所からの常連客が大半を占めるようなお店は商圏が狭いと言います。これはどちらが良いということではなく、商圏とお店の業態がマッチしていないと経営が成立しないということです。
例えば、隠れ家的な高級フレンチのようなお店は、職場や自宅が近くになくてもわざわざ遠いところから足を運ぶお客さまが多いと思います。そのようなお店は商圏の広いお店と言えるでしょう。遠いところから足を運んでくるのですから、店内は非日常を感じられる雰囲気を作り出し、手の込んだ料理を提供しなければお客さまは満足しません。また、こうしたお店は同じお客さまがちょくちょく利用することはありません。その分商圏を広くすることでバランスをとっているのです。
では逆に、商圏の狭いお店というのはどんなお店でしょうか。地元密着型の大衆食堂などは商圏の狭いお店と言えますね。ランチタイムや夕飯時に常連客でいっぱいになるようなお店です。毎日のように通えるお店にするためには、リーズナブルな価格設定にして、かつ食べ飽きないメニューにすることが重要です。そうすることでお客様の来店頻度を高めて商圏が狭くても成り立つようにするのです。
一般的に商圏は、中心から0.5キロメートルとか所要時間10分以内の範囲で表します。そしてその範囲内にどれだけの人が生活しているかを表したものが「商圏人口」です。都心の駅前に近ければ商圏人口は多くなり、郊外や田舎の幹線道路沿いなどは商圏人口は少なくなります。商圏人口の多少は、あなたが選んだ業態がどのような「市場」なのかに密接に関わってきますが、それについては別の項で詳しく解説します。
業態の選択にあたって、もうひとつ密接な関係にあるのがお客さまの利用動機です。同じレストランでも「リーズナブルなファミリーレストラン」から「雰囲気のよい高級レストラン」までさまざまです。どちらでもいいから空いている方に行こう、とはなりません。普通は、一緒に行く人や予算によってどのようなお店を利用するのかを決めています。業態を検討する際に、このことをしっかりと頭に入れて的外れな出店とならないようにしましょう。
ここまでの段階で、想定するお客さまのターゲット層や利用動機、業種、業態などを検討してきたと思いますが、これらをコンセプトに落とし込む作業はとても重要になってきますので、丁寧に進めたいところです。そこで、有効な方法として、検討項目を一覧表にして整理する方法があります。
WHO | 誰が:組織(個人or会社)、スタッフ |
WHERE | どこで:お店の立地 |
WHAT | 何を:提供するもの |
WHOM | 誰に:ターゲット層 |
WHEN | いつ:営業時間、繁忙期 |
HOW | どのように:業態 |
HOW MUCH | いくらで:平均価格帯 |
このように5W2Hで検討項目を表にまとめると、自分のお店に対する考え方を整理しやすくなります。雑然と頭の中だけで考えていくと、それぞれの項目に一貫性がなかったり、抜けがあったりしますので課題や検討結果を見える化することはとても大事です。